ニュースの概要
米国中小企業庁(SBA)は10月15日、動画制作者、配信者、ポッドキャスター、ゲーマー、デジタル出版社、ソーシャルメディア事業者、制作会社などが、自社の業種コードをどう選ぶべきかを示した。中小企業として融資や政府契約の枠を使えるかどうかは、この業種コードで決まる。指針では、まず「映画・動画産業」にあたるNAICS 5121を出発点とし、主な事業内容に応じて、より細かい6桁のコードへ進む流れを案内している。元記事は、こうしたクリエイター主導の事業が約2,700万に上りうると伝えている。発信を仕事にする人々を、制度上の事業者として扱う姿勢がはっきりした。
引用元: 米国SBA、クリエイター主導企業を中小企業向け分類の対象として明確化(Influencer Marketing Hub / Net Influencer)
分析・見解
業種コードの選び方が、融資や契約の入り口を決める
SBAの中小企業認定は、業種ごとに決まる規模の上限で判断される。業種は北米産業分類(NAICS=事業を分類する番号)で示し、上限は売上高や従業員数で定められている。今回の指針は、動画制作者、配信者、ポッドキャスターなどが「映画・動画産業」の5121から探し始め、主な事業内容に近い6桁コードへ絞り込むよう示した。
これまで多くのクリエイターは、自分の仕事がどこに当てはまるのか分からず、申請の手前で止まりがちだった。探し始める場所が示されただけでも、手続きの心理的な壁は下がる。
趣味の延長から事業者へ、見られ方が変わり始めた
元記事は、対象となり得るクリエイター主導の事業を約2,700万社と伝えている。その大半は、従業員のいない個人事業とみられる。これまで行政の統計では、動画投稿者は「個人の副業」に埋もれやすかった。
日本でも事情は似ている。個人の発信者が「映像・音声・文字情報制作業」と「インターネット附随サービス業」のどちらに入るのか、はっきりしない場面は多い。米国は先に、制度の側から入口を示した形だ。
収益が複数に分かれる仕事を、一つのコードにどう収めるか
動画の収益は、広告の分配、企業案件、グッズ販売、会員制、講座などに分かれる。ところが業種コードは、原則として主な事業内容で一つ選ぶ。たとえばゲーム実況が中心でも、売上の大半が企業案件なら、広告やマーケティング寄りの分類が自然な場合もある。
コードによって規模の上限が違えば、同じ売上でも「小さな事業」と認められるかどうかが変わり得る。だから選び方は、単なる書類上の作業ではない。どの事業を自分の軸と見せるかという、戦略に近い判断になる。
入口が見えても、審査の中身までは楽にならない
指針は、融資の承認や契約の獲得を保証するものではない。貸し手が見るのは、収入の安定、返済能力、帳簿の整い方である。プラットフォームの規約変更で収益が急に落ちる仕事は、その点で不利になりやすい。
それでも、この動きは軽くないと考える。業種コードは、これまで自己紹介の一行にすぎなかった。これからは、融資や政府契約で使われる公的な名札になる。名札が決まれば、金融機関や調達担当者も、クリエイターを前提にした商品や発注の形を作りやすくなる。次の焦点は、会計ソフトや銀行のクリエイター向け口座が、この分類に合わせて整っていくかどうかだ。
ビジネスへの影響
申請前に「主たる事業」を数字で説明できるようにする
まず、直近の売上を収入源別に分けた表を作りたい。広告分配、企業案件、物販、講座、会員制の割合が見えれば、主な事業内容を根拠つきで説明できる。業種コードを選ぶときも、貸し手に事業を説明するときも、この表が土台になる。
動画制作が中心なのか、企業向けの制作請負が中心なのかで、取引先から見える姿は大きく変わる。半年から一年ほどの数字を見て、最も大きい柱を自分の言葉で言えるようにしておくとよい。
発注する企業側にも、確認すべき点が生まれる
企業の調達担当者にとっては、クリエイターへの発注が中小企業向けの調達枠に数えられるかを確認する材料になる。取引先登録の書類に、業種コードや事業形態を記入してもらう運用を検討したい。
米国企業との取引や、米国政府に関わる案件を扱う場合は、特に意味が大きい。相手の分類を把握しておけば、契約条件や報告の求め方で迷う場面が減る。
日本の個人事業主も、今のうちに整えられること
日本の制度が米国と同じになるわけではない。ただ、開業届の業種欄、請求書の書き方、帳簿の分け方を整えておくと、将来の融資や補助金の申請で説明が早くなる。収入源ごとに帳簿や口座を分けるだけでも、十分に効果がある。
あわせて、特定のプラットフォームに売上が偏っていないかも見直したい。受注経路を増やしておくことは、収入の安定を示す材料になり、貸し手への説得力も高まる。
